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藤井叡王、出口六段を一蹴。番勝負十戦無敗

第7期叡王戦五番勝負(2022/4/28-5/24)
藤井聡太叡王 3(1千日手)0 出口若武六段

4年前の新人王戦に続く藤井vs出口の番勝負、藤井叡王が3-0で出口六段を一蹴、これで番勝負十戦無敗、タイトル獲得数は早くも8となった。

今回の番勝負で興味深かったのは、藤井後手番の第2局だった。相掛かりから手番が藤井に回り速攻、馬を作って敵陣に迫り、夕刻には優勢な局面に持ち込んだ。

ところが下図から、▲1六飛△2九馬▲2六飛△1八馬が繰り返されて千日手になってしまう。その間、両者ともほぼノータイム。優勢な藤井叡王は△8六香や△2七歩といった打開手段があり、もちろん見えていたはずだが、あえて指さなかった。

千日手は先後入れ替えて即日指し直しだから、後手番は無理して打開せず千日手に持ち込むのが得策とされている。だが、個人的には、藤井叡王の余裕であったように思っている。

その少なからぬ理由のひとつは、せっかく挑戦者に勝ち上がった出口六段に花を持たせたいということがあったのではないかと勝手に推測している。

同じ関西奨励会で、出口六段の方が歳は7つ上。三段リーグで出口が停滞している間に藤井は一期抜け。前回の新人王もストレート、今回の叡王戦もストレートでは、あまりに申し訳ないと思ったのではなかろうか。

勝負師はそんなことではいかん。叩ける時に叩いておけというのは大山・升田や中原・米長の時代で、いまやAIの時代である。二百人前後しかいない同業者で、対局するのは二、三十人。一日中顔を突き合わせなければならないとなると、別の観点も重要になるだろう。

もう一つは、ファンサービスである。叡王戦なので新聞掲載はないが、ABEMAでインターネット中継がある。展開が早くて数多く対局が見たいファンは少なくないから、先後入れ替えてもう一局どうぞと考えたのかもしれない。

いずれにしても、後手番は千日手歓迎というのが定跡だし、持ち時間が少なくなればミスも出やすい。ゆるめた訳ではないだろうけれど、無理しなかったことは確かである。

思うに、藤井叡王は出口六段だけでなく、誰と戦っても何のタイトルだろうと、後手番だったら無理しないで千日手にするのではないだろうか。その背景にあるのは、一局ならともかく、番勝負で負ける訳がないという自信である。

もちろん藤井叡王もAIで研究しているから、AIとやれば負けることは分かっている。だから、もし将来自分より強い人間が出てきたとしても、それほどあわてないような気がする。(その頃まで生きているだろうか?)

そのあたりが、大山十五世とか米長永世棋聖と違うところである。きっと、目の前で戦っている人間は真の対戦相手ではないし、だから目の敵にする必要もないと考えているのである。

一つだけ、藤井五冠がおそらくほっとしたのは、永瀬王座との棋聖戦前に決めることができて、準備に時間がとれることだろう。

p.s. 将棋関連記事のバックナンバーはこちら

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出口挑戦者の先手番となった第2局、藤井叡王は千日手をあえて打開せず、指し直しにして手堅く勝利。後手番で無理することはないとはいえ、余裕がないとできない選択であった。

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taipa

Author:taipa
 

6年前にリタイア、気ままな年金生活を送っています。

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