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頂上で公共財について思う 武甲山(後編)

「長者屋敷の頭」の分岐から先は、どこまでも深い林が続く急斜面をスイッチバックで登って行く。ここまで来れば、頂上まで1時間とかからないはずだが、普通の山なら見えるはずのピークが見えない。

それよりも不安なのは、脇道の方向には「この先私有地立入禁止。発破作業中につき危険」などと書いてあることである。武甲山の東側は、西武電車から見て分かるように山体の半分が採掘場と化している。中腹ならともかく、頂上近くではすぐ近くが絶壁となっているだろう。

まあ、登山道ははっきりしているので迷い込むことはないにしても、山を崩すほどのダイナマイトをすぐ横で使っているというのは、おだやかではない。この山でなければ石灰石は採れないのだろうか。

ようやくスイッチバックが終わると、斜面の左方向へ、次いで右方向へとトラバース道である。そして、唐突に分岐点に出た。そこから下るとシラジクボから小持山方面とある(分岐から一の鳥居へ向かう登山道は階段コースという名前だったが、土砂崩れで廃道)。

分岐から先は、傾斜がややゆるやかになり頂上広場となっている。右手にトイレの大きな建物があるが、3月は冬季のため使用不能である。少し上がった場所に大きな鳥居が見える。御嶽神社である。

御嶽神社の建物はたいへん立派であり、土台はもちろんコンクリートである。拝殿は鉄製で、扉に鍵がかかっている。格子の間に隙間があって、お賽銭はここから入れるようにとある。登山の無事を御礼して、二礼二拍手一礼でお参りする。

拝殿の先はさらに標高差で20mくらい上がる。全面頑丈なフェンスで囲いがしてある。よくTVで映る頂上展望台はどこだろうと思って探すと、そのフェンスを左に上がるとほんの少しの場所が空けてあって、山名標と方向案内板がある。

ベンチも何もない、休憩もできないし人数もあまり入れない頂上である。9時25分到着。4時間くらいかけて登って、秩父市街への展望が開けるのはここだけである。

田中陽希とグレートトラバースのスタッフも、これには参っただろう。頂上が狭い山はいくつもあるが、大部分を私有地として立入禁止にして、ごく一部だけ「これはわれわれの好意です」みたいに入れるようにするというのは、どういう神経なのだろう。

山とか川・海といった自然物は誰のものでもなく、「公共財」といってすべての人が利用できるものと習った。石灰石はセメントとなり、建物や道路・堤防などに利用されるが、それで儲けるというのは本来できないはずである。

いまでは、採掘権とか利用権、海ですら経済水域などといって、カネ儲けに使うのが当たり前になってしまった。そのうち、水や空気でさえも権利で縛られるようになってしまうかもしれない。私の生きている間は勘弁してほしいものだ。

そんなことを思っていると、5分もたたない間に展望台に次の登山者が登ってきた。この日初めて会う他の人である。

浦山口着の始発より1時間近く前に出てきたので、登る途中では誰とも会わなかった。シニアの単独行の人だったが、おそらく一の鳥居から登ってきたのだと思う。というのは、この後次々と登ってくるグループとすれ違ったからである。

ゆっくりできる場所もなかったので、頂上付近にはあまり長居しなかった。途中で一息ついてお昼を食べたのは、本当に絶妙のタイミングであった。

(この項続く)

p.s. 「中高年の山歩き」、バックナンバーはこちら

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シラジクボ方面との分岐を過ぎると、やがて頂上広場に達する。広くなっているが、ベンチ等はない。右手のトイレは冬季使用不能。正面が御嶽神社。

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頂上の御嶽神社はたいへん立派。お賽銭箱は置いてなくて、扉の隙間から入れるよう書いてある。

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武甲山頂上。撮影したすぐ後ろがフェンスで、たいへん狭い。秩父市街への展望が開けるのはここだけで、しかもフェンスの向こうにさらに金網があり見通しがさまたげられる。二百名山から外した方がいいのでは。

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Author:taipa
 

6年前にリタイア、気ままな年金生活を送っています。

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