私の糖質制限入門(その3 糖質制限への反論)
- 2021/02/17
- 05:15
3.糖質制限への反論
さて、糖質制限の理論は理解したけれども、自分自身でもこれはどうなんだという疑問がない訳ではなかった。その大きなものは、低血糖発作とシャリバテである。
低血糖発作とは、糖尿病の薬(多くは、インシュリンを強制的に分泌させる薬である)を飲むと、場合によって血糖値が必要以上に下がってしまい、頭痛、悪寒、手足のしびれ、悪くすると意識不明等の症状が出ることである。私自身も、実際になってしまったことがある。
糖質制限の本を読むと、体内にブドウ糖が足りなければ肝臓でアミノ酸から生成されるし、そもそも体を動かすエネルギーとしてはケトン体があるから、血糖値が低いからといってすぐに症状が出ないはずである。
ところが、現実には低血糖発作が起きる。これは、脳が体をだまして糖分の摂取を促しているのか、あるいは体が発するSOSなのか。アル中でも薬物中毒でも禁断症状が出るから、自分自身でもそのどちらなのか区別するのは難しい。
もう一つは、シャリバテである。山登りしている人はほとんどみんなシャリバテの経験がある。あれもまた、辛いものである。だから、山歩きの際には、お昼とかにこだわらず、こまめに行動食をとって栄養補給するのがいいとされている。
これも、肝臓で生成されるブドウ糖とかケトン体で体が動かせるとすれば、それで動かせれば問題ないはずである。筋肉に一度に負荷をかける際にはブドウ糖代謝が優先するとされるが、それほど高負荷でなくてもシャリバテは起きる。これも、脳が糖質を求める幻影なのであろうか。
自分自身の身体感覚からするととても幻ではないのだけれど、シャリバテしたのはかなり昔のことなので記憶が定かでない。ただ、これについてはなるほどと思わないこともない。
というのは、羽根田さんの遭難本のどこかに、遭難して食糧がなくなってしまい、お土産に買ったマヨネーズと沢の水で十数日間生き延びたという話があるからである。
マヨネーズの原料は卵、油、塩だから、糖質をそれほど多く含まない(最近のマヨネーズはそうでもないらしい。特に、カロリーオフのもの)。もし、ブドウ糖が体を動かすエネルギーの中心であるならば、マヨネーズだけで生き延びることはできないはずである。
体を動かすというのは、単に歩き回ることだけではない。仮に一ヶ所にとどまって動かないとしても心臓はじめ内臓が動かなければならないし、エネルギーの約2割は、脳で消費されると言われている。
一方で、カーボローディングという、スポーツや登山で有効とされる方法がある。体を動かす前日に炭水化物を普段より多めにとることにより、体内にエネルギーとなる糖分を蓄えて本番に生かそうとするものである。
私自身も、登山の前にもち米の入った混ぜご飯を食べると元気に歩けるように思うし、朝食にはパンよりご飯の方が腹持ちがいいと感じる。しかし、糖質制限の理論によると糖分は数時間分しか体内に蓄えられないとされるので、そうなるとカーボローディングにはあまり意味がないということになる。
だが、糖質制限の理論の中で最も疑問に思えるのは、糖質(炭水化物)で足りないエネルギーをタンパク質や脂肪で取ればいいという考え方である。
糖質のとり過ぎが体に害があることには同意するけれども、だからタンパク質や脂肪のとり過ぎが害にならないということにはならない。タンパク質や脂肪は吸収されずに排泄されるというが、体が耐えられる限り消化して体内に取り込むはずで、それが害にならないと証明された訳ではない。
肉や乳製品、油脂のとり過ぎは、理論的にも体の酸化を起こして老化の大きな要因であるとされている。そして、体を維持するためにさまざまな栄養素が微量でも必要とされるので、一部の食品に偏ることは栄養素の偏りを招く。
厳密に糖質を排除してその分のエネルギーを他で求めるという糖質制限原理主義は、メリットよりもデメリットの方が大きいように思える。
(この項続く)
p.s. 糖質制限シリーズは新連載です。約1ヵ月後にホームページに掲載予定です。ホームページはこちら。

糖尿病患者にとって、低血糖発作は恐怖である。最低限のブドウ糖は肝臓で生成されると言われても、だったら低血糖にはならないはずと思ってしまう。(出典:糖尿病情報センター)
さて、糖質制限の理論は理解したけれども、自分自身でもこれはどうなんだという疑問がない訳ではなかった。その大きなものは、低血糖発作とシャリバテである。
低血糖発作とは、糖尿病の薬(多くは、インシュリンを強制的に分泌させる薬である)を飲むと、場合によって血糖値が必要以上に下がってしまい、頭痛、悪寒、手足のしびれ、悪くすると意識不明等の症状が出ることである。私自身も、実際になってしまったことがある。
糖質制限の本を読むと、体内にブドウ糖が足りなければ肝臓でアミノ酸から生成されるし、そもそも体を動かすエネルギーとしてはケトン体があるから、血糖値が低いからといってすぐに症状が出ないはずである。
ところが、現実には低血糖発作が起きる。これは、脳が体をだまして糖分の摂取を促しているのか、あるいは体が発するSOSなのか。アル中でも薬物中毒でも禁断症状が出るから、自分自身でもそのどちらなのか区別するのは難しい。
もう一つは、シャリバテである。山登りしている人はほとんどみんなシャリバテの経験がある。あれもまた、辛いものである。だから、山歩きの際には、お昼とかにこだわらず、こまめに行動食をとって栄養補給するのがいいとされている。
これも、肝臓で生成されるブドウ糖とかケトン体で体が動かせるとすれば、それで動かせれば問題ないはずである。筋肉に一度に負荷をかける際にはブドウ糖代謝が優先するとされるが、それほど高負荷でなくてもシャリバテは起きる。これも、脳が糖質を求める幻影なのであろうか。
自分自身の身体感覚からするととても幻ではないのだけれど、シャリバテしたのはかなり昔のことなので記憶が定かでない。ただ、これについてはなるほどと思わないこともない。
というのは、羽根田さんの遭難本のどこかに、遭難して食糧がなくなってしまい、お土産に買ったマヨネーズと沢の水で十数日間生き延びたという話があるからである。
マヨネーズの原料は卵、油、塩だから、糖質をそれほど多く含まない(最近のマヨネーズはそうでもないらしい。特に、カロリーオフのもの)。もし、ブドウ糖が体を動かすエネルギーの中心であるならば、マヨネーズだけで生き延びることはできないはずである。
体を動かすというのは、単に歩き回ることだけではない。仮に一ヶ所にとどまって動かないとしても心臓はじめ内臓が動かなければならないし、エネルギーの約2割は、脳で消費されると言われている。
一方で、カーボローディングという、スポーツや登山で有効とされる方法がある。体を動かす前日に炭水化物を普段より多めにとることにより、体内にエネルギーとなる糖分を蓄えて本番に生かそうとするものである。
私自身も、登山の前にもち米の入った混ぜご飯を食べると元気に歩けるように思うし、朝食にはパンよりご飯の方が腹持ちがいいと感じる。しかし、糖質制限の理論によると糖分は数時間分しか体内に蓄えられないとされるので、そうなるとカーボローディングにはあまり意味がないということになる。
だが、糖質制限の理論の中で最も疑問に思えるのは、糖質(炭水化物)で足りないエネルギーをタンパク質や脂肪で取ればいいという考え方である。
糖質のとり過ぎが体に害があることには同意するけれども、だからタンパク質や脂肪のとり過ぎが害にならないということにはならない。タンパク質や脂肪は吸収されずに排泄されるというが、体が耐えられる限り消化して体内に取り込むはずで、それが害にならないと証明された訳ではない。
肉や乳製品、油脂のとり過ぎは、理論的にも体の酸化を起こして老化の大きな要因であるとされている。そして、体を維持するためにさまざまな栄養素が微量でも必要とされるので、一部の食品に偏ることは栄養素の偏りを招く。
厳密に糖質を排除してその分のエネルギーを他で求めるという糖質制限原理主義は、メリットよりもデメリットの方が大きいように思える。
(この項続く)
p.s. 糖質制限シリーズは新連載です。約1ヵ月後にホームページに掲載予定です。ホームページはこちら。

糖尿病患者にとって、低血糖発作は恐怖である。最低限のブドウ糖は肝臓で生成されると言われても、だったら低血糖にはならないはずと思ってしまう。(出典:糖尿病情報センター)