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森本あんり「反知性主義」

反知性主義という言葉が、最近わが国でもよく使われるようになった。ニュアンスとして、反インテリ、反体制、理屈じゃなくて感性、のような感覚があるが、この言葉が生まれた米国と日本ではかなりの違いがあることがこの本を読むとよく分かる。

端的にいうと、日本においては「私がそう思うから」が根拠なのに対して、米国では「聖書にそう書いてある」が根拠なのである。そこを理解しないと、反知性主義という言葉が底の浅いものとなってしまう。

日本において反知性主義とされる人々は、理屈はともかくとして私が思うことが真実である、といった傾向が強い。私の日本史ブログにも時々そういう人達が現われる。お互いに論拠をあげて議論したいのではない。私の言うことを信じよという宣伝をしたいのである。

一方で、もともとホフスタッターが反知性主義を批判した論拠は、聖書を読めば主イエスはあなたのような人を否定しているということなのである。確かに、ホテルに置いてある聖書をめくるだけでも、律法学者やパリサイ人を否定する場所はすぐに見つかる。

これには前段があって、メイフラワーでアメリカに渡ってきた人々はピューリタンが多く、従来のカトリック教会に冷遇されていた(迫害といってもいいかもしれない)。しかも、ケンブリッジやオックスフォードを出た秀才が多かったので、新大陸アメリカをピューリタンの理想郷としようと思ったのである。

だから、入植後すぐにハーバードやイェール、プリンストンといった今日アイビーリーグといわれる大学を創立し、牧師の養成と入植者の教育水準引き上げを図ろうとした。

しかし、こうした理想主義は、アメリカが国として成長するに伴いさまざまな人種、経済環境、教育水準の人達が集まるにしたがって、実情と合わなくなってきた。何を小難しいこと言ってるんだということである。

牧師の養成だの教育水準の向上ではなく、主を信じることが一番大切というのが、大多数の庶民の実感だったのである。ケンブリッジやオックスフォードが偉くてそれ以外はダメだなんて主イエスは言っていないぞ、と。

それを踏まえると、聖書の知識もキリスト教の信仰も持たない日本人が、「反知性主義」などといったところでちゃんちゃらおかしいということになる。結局みんな、アメリカ発祥の言葉を自分の都合のいいように使っているだけなのだ。

反知性主義とは直接関係しないが、この本に書かれていることでたいへん印象に残ったことがある。旧約聖書の申命記の中に、神がモーセを通じてイスラエルの人々に語った言葉として以下があるそうだ。

「もしあなたがたが心をそむけて聞き従わず、誘われて他の神々を拝み、それに仕えるならば、わたしは、きょう、あなたがたに告げる。あなたがたは必ず滅びるであろう。」

現代のキリスト教徒の多くは、物神である貨幣を拝み、それに仕えているように見える。だとすれば、必ず滅びるというのが神のお告げになるのだが。

p.s. 図書館で借りた本の書評や、1970年代少女コミックスについていろいろ書いてます。ご興味がある方はこちら


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反知性主義は日本ではさまざまなニュアンスで使われているが、米国のピュリッツァー賞受賞作であるホフスタッターの「アメリカの反知性主義」が初出である。この本はホフスタッターが使った趣旨を忠実にたどっている。

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