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ササニシキ ~半世紀前の話(4)

今年も収穫の季節が近づいた。近所の田圃を歩いていると、今年は田植えが半月ほど早かったので、長梅雨にもかかわらずに穂が出始めている。「みのるほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」の句が思わず口をつく。

千葉県でも、圧倒的に多く作付けされているのはコシヒカリである。「コシ」ヒカリというくらいで昔は新潟中心に作られていた銘柄なのだが、いまや全国各地で人気があり、コシヒカリをもとに作られた新銘柄も続々と開発されている。

今から50年前、コシヒカリと並ぶ人気銘柄米があった。ササニシキである。コシヒカリが新潟なのに対し、ササニシキは宮城を中心として作られていた。コシヒカリが「ふっくらもちもち」した食感であるのに対し、ササニシキは「さっぱりすっきり」した食感であった。

ご飯だけで食べるならば、コシヒカリの方が味わいがあったが、ササニシキも自らを主張しすぎないおいしい米であった。お寿司屋さんにササニシキを好む人が多かったというのも、わかる気がする。

ところが現在、ササニシキをマーケットで見かけることはほとんどない。現代人にとって銘柄米といえば、コシヒカリ大前提でどこの生産地かという点に絞られているが、半世紀前にはかなり状況が違ったのである。

さらに、40年ほど前には西日本産のコメというのはあまりおいしいものではなかった。現在では全国どこでもコシヒカリ系の銘柄が作られているけれど、当時は生産量が多く病気に強いのが一番で、味は二の次だったのである。

米店のときに書いたように、当時は食管法があって、農家はコメを作れば農協が決まった金額で引き取ってくれるのであった。すでに減反政策は始まっていたものの、作付けを減らして補助金をもらうか、収穫を多くして収入を多くするかの違いだけである。

だから、農家としても農林省や農協が推奨する銘柄を作っていればよく、より高く売れるコメという観点はなかった。だから、農林何号とか、日本晴とか、多収穫で病気に強い銘柄を多く作っていたのである。

食管法の廃止と輸入自由化によって、農家の銘柄選択は大きく変わった。コシヒカリのように収穫量より味のいい品種が好まれたことと、もう一つにはササニシキが平成のコメ騒動の際冷害で不作だったという要因があった。

ササニシキはもともと東北地方での作付けを前提に品種改良された銘柄であったが、それでもやはり病気に弱かった。他の品種より背が高く、寒冷な気候や強風によって倒れるものも多く出た。

そして、コメ自体の味ではコシヒカリを好む消費者が多かったので、農家の作付けもコシヒカリやコシヒカリをもとに品種改良された銘柄(ひとめぼれ、あきたこまち、きらら397など)に移ってきた。下のグラフは2000年までのものだが、すでにコシヒカリとは大差がついている。

今日ではこうした統計はほとんどとられていないようだが、ササニシキ単体で作っている水田はほとんどなくなってしまったと思われる。お米ひとつでも、半世紀の間にかなり変わってしまったのである。

p.s. 「半世紀前の話」、バックナンバーはこちら



かつてコシヒカリと並ぶ両横綱と呼ばれたササニシキ。平成に入ると急激に収穫を減らし、今日ではほとんど作られていない。

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