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豊島竜王名人、叡王挑戦へ ~第5期叡王戦

第5期叡王戦挑戦者決定三番勝負(2020/2/6-2/24)
豊島将之竜王名人 O 2-1 X 渡辺明三冠

叡王戦は最も新しいタイトル戦である。その前に竜王戦ができたのが1988年、昭和終わりなので、平成唯一の新設タイトルということになる。

タイトル戦に昇格した第3期の高見・金井がC級1・2組、第4期挑戦者決定戦の永瀬・菅井がB級1組だから、3年目にして初めて名人・A級が上がってきたということになる。そして、4月からの名人戦七番勝負と同じ組み合わせで、豊島竜王名人は昨夏に引き続いて十番勝負を戦うこととなった。

叡王戦にA級棋士達が登場しなかったのは、私が思うに、叡王戦で勝つとコンピュータと戦わなくてはならないというイメージがあったからではないだろうか。第1期優勝者の山崎八段、第2期優勝者の佐藤天名人(当時)は、コンピュータと戦わなくてはならなかった。現在、その制度はない。

ネット中継があるので早指し棋戦と思われがちであるが、本戦の持時間はチェスクロック3時間+夕食休憩ありなので、早指しというほどではない。だから若手ばかりが活躍しなくてもよさそうなものだが、これまではそういう傾向があった。

ところが今年は一転して、トップクラスが勝ち上がった。それも、竜王名人と三冠というトップ中のトップで、二冠を持つ永瀬叡王と合わせて八冠中七冠を占めるという文句なしのトップ対決である。

渡辺三冠は準決勝で、青嶋未来五段の中飛車に銀冠の対抗形から、振飛車に全く捌かせずに圧勝した。一昨年のB1降格から全勝での復帰以来好調を長く持続しており、今期のA級順位戦でも1月中に早々と挑戦を決めた。王将戦、棋王戦の番勝負と並行しての戦いとなる。

豊島竜王名人の準決勝は、佐々木大地五段との矢倉戦。中盤では評価値で佐々木五段が若干リードしていたが難解で、桂交換からの金取りを手抜いて玉頭を攻め押し切った。研究範囲だったようで、持ち時間をかなり残しての決勝進出となった。

挑戦者決定戦第1局は豊島竜王名人の先手。角換わりとなり、ほとんど持ち時間を使わないうちに渡辺三冠が角を打ち込み、歩頭の桂打ちで9筋を突破する勢い。ここで竜王名人の手が止まり、持ち時間3時間のうち2時間の長考。指された手が疑問手で、渡辺三冠の角切りからの攻勢が決まった。

豊島竜王名人は研究範囲であればほとんど時間を使わず、未知の局面になってはじめて長考する。ところが、長考の結果が良くないことがしばしばあり、昨年の王位戦七番勝負でも何度かその傾向がみられた。

そして第2局、先手番の渡辺三冠が一気に挑戦を決めるかと思われたが、そううまくはいかなかった。渡辺三冠が時折見せる中盤から一気に形勢を損ねる将棋で、持ち時間を半分残しての早い投了となった。勝負は第3局に持ち込まれた。

迎えた第3局。渡辺三冠はこの時点で王将戦、棋王戦とのトリプル番勝負で過密日程、しかも、3連敗中であった。秋には勝率8割という驚異的な勝ち方をしていたのに、突然の変調と言っていいかもしれない(中継をみていると、花粉症なのかもしれない)。

振り駒の結果、竜王名人の先手となったが、渡辺三冠が角道を止めて雁木を目指す。竜王名人は意表を突かれたかと思いきや、ほとんど時間を使わず棒銀へ。夕食休憩時には持ち時間に1時間以上の差がつき、しかも棒銀が2筋を突破するという竜王名人のペースとなった。

ところが、例によって竜王名人が長考するようになって雰囲気が変わる。駒得していた渡辺三冠が敵陣に飛車を打ち込み、両者一分将棋でどう転ぶか分からないところまで形勢が最接近する。しかし、最後は玉の堅さの差が出て竜王名人が再びリードを奪い、渡辺玉を寄せ切った。

これで、竜王名人が永瀬二冠に挑戦という若手トップ対決が実現した。この二人が番勝負で対戦するのは初めて。そして、竜王名人は名人戦と並行しての七番勝負で、現在の渡辺三冠と同様の過密日程となる(インタビューによると、NBAを見ていた時間を充てれば大丈夫というけれども)。

研究に裏付けられた豊島竜王名人の強さは抜群だが、永瀬二冠の粘りも他者の追随を許さない。研究がはまれば竜王名人だが、長考を要する場面になると上に書いたような死角がある。

そして、この両者は七番勝負に先駆けて、進行中の王位戦リーグ紅組で当たることになっている。おそらく事実上の紅組1位決定戦で、白組からは藤井七段が上がってくる可能性がかなり高い。こちらも相当に注目度が高い。

そして、タイトル昇格以降の叡王戦は2回とも4-0決着で、変動持ち時間という叡王戦の特色が出るところまで行かなかった。タイトル戦では他に例がない持ち時間1時間の早指し勝負に持ち込まれれば、どうなるか分からない。今回の叡王戦は、さまざまの角度から楽しめそうである。

p.s. 将棋記事のバックナンバーはこちら


挑戦者決定戦第3局。難解な終盤戦で両者1分将棋となり、渡辺三冠が6二の銀を7一に引いた手が大きかった。玉の退路は開けたものの、3一角が生じて一気に寄り形となった。

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taipa

Author:taipa
3年前にリタイア、気ままなリタイア生活を送っています。
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