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なぜ日本古代史を研究するのか ~日本古代史研究の問題点(2)

11.2 なぜ日本古代史を研究するのか

では、昔の人達はどうだったのか。社会の教科書では徳川光圀や本居宣長は純粋な好奇心から日本古代史を考証したように書かれているけれども、よく考えると実際はそうではない。光圀は水戸学のもとになった朱子学的な思想があり、本居宣長にしても国学で、後の尊皇思想につながっている。

ということは、自分の思想を広めるのに都合がいいように日本古代史を再構成したのではないかという疑問が残る。そう考えると「もののあわれ」にせよ「ますらを」にせよ、事実に基づくというよりも価値判断とか美意識がまずあって、古書からそれに合うものを採ってきたと言えなくもない。

なんと古臭いと笑うことはできない。現代のわれわれが遺伝学的見地や考古学的見地を前提として考証するように、彼らは当時の最先端の理論である朱子学とか大義名分論を前提とした。私の学生時代にはマルクス経済学が必修科目の半分近くを占めていたのだから、五十歩百歩である。

私は、日本の古代に何があったか真実の姿を純粋に知りたいと思う。それを知ることにより、古代の人々の思いが現代につながると思うからである。あるいは、ただ単に「知りたい」という欲望だけが独立してあるのかもしれない。学問とは、もともとそういうものだったのではないだろうか。

例えば医学とか薬学といった分野は、人体がどうなっているか知ることにより、痛みを除き病いから身を守るという目的がある。しかし、歴史学にせよ民俗学にせよ、あるいは天文学や生物学にしても、実利と直接の結びつきはあまりない。千年前から人々が今の暮らしをしていたとしても、太陽が地球の周りを回っていたとしても、だから何が困るという訳ではない。

宇宙開発だって、未知の資源を獲得するとか地球以外に居住空間を作るとか予算をとる上で理屈付けはしたかもしれないが、実際のところは純粋な好奇心から出発している。だからすぐカネに結びつかないとなったらアメリカもロシアも月に行くのをやめてしまった。

いまや、推論やシミュレーションはAIがするものだという世の中である。しかし、何かを知りたいという好奇心はAIにないものである。AIが近い将来、将棋の必勝法を見つける可能性はあるけれども、どういうルールにすれば最も楽しめるゲームとなるかをAIが推論するのは難しいだろう。AIだけならば、いまだに将棋は大象棋のままかもしれない。

こうした点に関して、よく似ていると思うのは新聞記者をはじめとするメディアの姿勢である。新聞にせよTVにせよ、もともとは報道機関であって広告会社ではない。報道機関の本務とは世の中に事実を正確に読者・視聴者に伝えることで、その目的は広い意味で不正を防ぐことにある。

政権の腐敗にせよ行政の怠慢にせよ、ひとりひとりの個人が感じているだけでは小さい力しか持たないが、メディアがとりあげることによって大きな影響力を持つようになる。記者クラブが優遇されているのはそうした任務を負っているからで、新聞社やテレビ局がカネを持っているからではない。

だから、報道機関に携わる者に求められるのは、不正を許さない心であり、人々に真実を伝えたいという情熱である。しかし実際には、TV局員は政治家や広告主のコネ入社であり、新聞社員は一流大学の成績優秀者である。彼らが求めるのはよりよい世の中にすることではなく、自分達の生活をよりよいものとすることである。

もちろん、世の中には本音と建て前があり、「きれいごとを言っても給料がもらえないよ」というのは就職したての新人社員が先輩方からよく言われることである。だからといって、自分達の仕事が何のためにあるかということを考えずに、自社の(あるいは自分の)利益向上だけのために仕事をしていれば、いずれ行き詰まるのは目に見えているようなものだ。

研究者についても同じことが言える。自分たちが研究しているそもそもの目的は、誰かにとって都合のいい理由付けをするためではない。ところが、実際にはそうなっている。そこから理論づけに都合のいい証拠を捏造するところまで、あと一歩の距離にすぎない。

(この項続く)

p.s. 「常識で考える日本古代史」、バックナンバーはこちら

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