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古くから死者の山として有名な「いやだにさま」 七十一番弥谷寺(中編)

登り始めて間もなく、柵でバリケードされて入れなくなっている古い建物があった。「俳句茶屋」と看板がある。「老朽化により危険ですので、立ち入らないでください」と書いてある。WEBには営業していたという記事も載っているのだが、確かに見た目も危なそうだった。

570段あるという石段を登り始める。なるほど、なかなかきびしい石段である。300段ほど登ったあたりに、自販機とベンチがある。ここで一休みする。ここで休んでいた老夫婦が、「自販機があるということは、裏から車道に抜けられるんだよ」と話していた。なるほどそう言われると、参道の柵の外に砂利道が続いていた。

剣五山弥谷寺(けんごさん・いやだにじ)、寺伝によれば、弘法大師が当山で護摩修法を行われた際、蔵王権現のお告げにより五柄の剣と唐より持ち帰った五鈷鈴を納められたことから、剣五山の山号とした。また弥谷は、仏の住む弥谷(みせん)の名をとったものという。

また、この弥谷寺は、恐山と並ぶ死者の山としても有名である。死者に再び会いたいと願う人は、関東ならば恐山に行くものとされるが、関西であれば弥谷寺に行けば会えるという。かの水木しげるの妖怪図鑑にも、「いやだにさま」として掲載されているくらいである。

そんな予備知識を持って仁王門まで来たのだけれど、実際は考えていたようなおどろおどろしい雰囲気ではなく、ひたすらしんどい登りが続く。大師堂・納経所のあたりまでは階段が続くと思うだけであるが、そこから本堂エリアまで、さらに百段以上登るにしたがって、なるほどそれらしき奇観となる。

本堂に登る最後の坂は、右側が山の岩肌で、いつの時代のものなのか多くの磨崖仏が刻まれている。その一角から水がしたたっており、たくさんの護摩木が供えられている。横に書いてある説明に、この水は山の上にあるのに涸れたことのない霊泉で、峰続きの天霧城の水の手として用いられた、と書いてある。

天霧城は戦国時代まで存続した山城で、室町幕府の管領・細川氏に仕えた香川氏の居城であった。香川県の香川なのでもっと有名であってもおかしくないのだが(律令時代からの地名である香川郡からそう名乗った)、長宗我部氏に敗れ、その長宗我部氏も秀吉に滅ぼされたので、いまや山の半分が採石場となってしまった。

この水場から始まる一画は昼なお暗く薄気味悪いが、恐山のようなおどろおどろしさはない。おそらくそれは、お参りする人達の念によるもので、人形だとか風車だとか三輪車がうず高く積まれている恐山とは違う。確かに、昔の人達は磨崖仏に気味悪さを感じたかもしれないが、私にはどちらかというと歴史の重みを感じさせる。

磨崖仏のある岩壁にそってさらに数十段を登ると、本堂である。山門から本堂まで合計570段ある。本堂前からは、これまで歩いてきた三豊市の景色が広がる。海も近いのだけれど、山の反対側になるため見ることはできない。

ご本尊は千手観音菩薩。本堂の奥にいらっしゃる秘仏である。本堂には自然木の銘板が掲げられており、「大然殿」と書いてあるのだろうか、おそらく大自然の造り出した本殿という意味と思われた。

この時間本堂まで登ってきているのは私だけで、静かに般若心経を唱える。本堂エリアにはお寺の人はいない。お勤めの時以外は大師堂の方にいらっしゃるようである。

登ってきた石段を下りて、大師堂へ。大師堂の中は広くなっていて、お参りをする仏壇の前が納経所である。これでは、お参りの前に納経という訳にはいかない。納経所の前を通る時、「お参りが終わりましたら、奥にお進みください」と声をかけられる。

大師堂の奥には獅子之岩屋という場所があり、建物の中から、ガラス越しに岩壁の磨崖仏を見ることができる。ここが弘法大師が修行した洞窟ということで、わざわざ磨崖仏を見られるように大師堂を建てた訳である。

お参りが終わって大師堂を振り返ると、どうやってあんな場所に貼ったんだろうと思われるような高いところに、千社札が貼ってある。建物自体それほど古いものではないようなので、修復工事の際にわざと古いお札を残したままにしたのかもしれない。

(この項続く)

p.s. 「四国札所歩き遍路」のバックナンバーはこちら


弥谷寺仁王門。道の駅から少し登ったところにあるが、ここから先が540段続く階段である。


これは370段上ったあとの、大師堂への石段。本堂へは、さらに170段ある。切幡寺に匹敵する、八十八ヶ所中最大の段数である。


弥谷寺本堂。銘板の材質・筆跡は仁王門と同じに見える。「大然殿」と読むのだろうか。背後はずっと岩壁で、無数の磨崖仏が彫られている。

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taipa

Author:taipa
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