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札所唯一の馬頭観音ご本尊 七十番本山寺(後編)

七宝山本山寺(しっぽうさん・もとやまじ)。山号は観音寺・神恵院と同じく背後の七宝山から。本山庄にあることから本山寺と呼ばれるようになったが、もとは長福寺という寺号だったと「霊場記」にある。

その霊場記挿絵を見ると、立地が現在とほぼ変わりないので驚かされる。川沿いの道から、仁王門を入って奥に本堂があるのは江戸時代から変わらない。しかし、本堂の横に五重塔はない。明治時代になって再建されたからである。

鎌倉時代に造られた本堂は国宝、仁王門は重要文化財である。境内はかなり広いのだが、工事中の隔壁や作業用車両の通路で分断されてしまい狭く感じる。

ご本尊は馬頭観音菩薩。四国八十八札所で唯一の仏様である。たいへんめずらしいので見せていただきたいのだが、残念ながら本堂の中にいらっしゃって見えない。

ただ、いただいたお姿によると、頭部が馬なのではなくて、不動明王のようなお顔で、頭に馬の頭をかたどった冠を被っている。調べると、多くの馬頭観音像は馬の姿ではなく、憤怒相の人面という造形となっているようである。

もともと馬頭観音とは、馬が観音様になったのではなく、観音様が畜生界を救うためのお姿をとっているもので、観音様であれば人面というのは当り前である。なぜ馬の頭と思っていたかというと、子供の頃に成田街道沿いにあった馬頭観音の石像はたいてい頭が馬だったので、そういうものかと思っていたのだ。

それも間違いという訳ではない。というのは、もともと馬頭観音はヒンズー教のヴィシュヌ神である。ヴィシュヌはシヴァと並んでヒンズー教の神々の中で格の高い神のおひとりであるが、ある時ブラフマー(梵天)の呪いを受けて頭がなくなってしまい、代わりに馬の頭をかぶって活躍したという神話があるらしい。

ヒンズー教ではそうなのだが、仏教では観世音菩薩が六道を救うため六つの形をとるうちの一つなので、人面の憤怒相をとっている。憤怒相をとる仏様は不動明王がたいへんポピュラーなので、不動明王が馬の冠を頭に乗せているように見えるのであった。

さて、明治時代末に建てられた五重塔は築百年を超えるため、2018年10月現在「平成の大修復」の最中である(平成では終わらず、令和になって完工するだろう)。境内いたるところに、「平成の大修復」の看板が立てられているのは、かなり美観を損ねている。

とはいえ、解体修復ということだから、相当の資金と工事期間が必要である。国宝になるような古い建築物であれば国からおカネが出るだろうし、善通寺のような大寺院なら資金力があるけれども、札所であるというだけではそれほどの余裕があるとは思えない。修復工事をアピールして、広く浄財を呼びかけないと難しいのだろうと思う。

明治時代の住職が、目がみえるようになったことに感激してかつての五重塔を再現したということだが、作る以上に維持管理におカネがかかるのは古今東西の習いである。八十八の多くのお寺に言えることだが、これまで残されてきたものを将来も残して行くのは、なかなか大変なことなのである。

この寺のお参りの際たいへん困ったのは、私と同じ頃に現れたじいさんが、ダミ声の大声で読経するのである。それも、どこの流儀なのか、最初は祝詞(なぜ祝詞?)、三帰三竟十善戒と続いて般若心経、光明真言、十三仏真言などを早口のダミ声の大声でまくし立てるのである。

すでに69ヶ所プラスアルファをお参りしている訳だから、大勢の読経も大声の読経も、平気とは言わないが自分の読経に集中することができる。でもこのじいさんの早口のダミ声の大声はどうにもお手上げだった。本堂では重なってしまったが、大師堂ではタイミングをずらして心静かにお経を上げた。

お参りを終えて納経所に行くと、「飴をどうぞ」とご接待される。「それでは1つだけ」とフルーツ飴をいただくと、「弥谷寺まで歩きだと遠いし、階段が多いからお腹がすくと大変ですよ。持っていらっしゃい」と6つ7つ一掴みでいただいた。よほど疲れているように見えたのであろうか。

この日の経過
神恵院・観音寺 9:20 →[4.8km]
10:30 本山寺 10:50 →


p.s. 「四国札所歩き遍路」のバックナンバーはこちら


本山寺仁王門。現在「平成の大修復」工事中で、作業道の柵が境内に続いている。


山門から参道をまっすぐ進むと、五色の幔幕に囲われた本堂。鎌倉時代の建築で、国宝である。写真はすでにダミ声じいさんが去った後。


境内は十文字に石畳の参道があり、本堂からみて左手に大師堂がある。大師堂の右が五重塔で、現在修復工事中で重機が何台か止まっていた。

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taipa

Author:taipa
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