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福本博文「ワンダーゾーン」

この間、学生会館らしき場所にいる夢をみた。なんでそんな夢をみたんだろうと考えているうちに、自分が学生会館のような場所で過ごしたのは大学の心理学研究サークルだけだったのを思い出した。そういえば、その2~3日前にこの本を読んだのだった。

私の若い頃、超能力とか超常現象がたいへんはやっていた。私もそういう方面に関心が深かったのだが、大学の心理学の授業はネズミを迷路に入れるとどうなるかとか、ゴリラの赤ちゃんに何の絵を見せるとこわがるかというような内容で(もちろんそれが保守本流である)、あきたらずにサークルに入って勉強会をしていた。

そういう勉強会をしていることをどこかで聞きつけて、他の大学の学生もよく来ていた。いま思い出すと、かなり美人が多かったような気がする。この本によると、そういう方面に関心のある女性には美人が多いようである(サイババの章に出てくる女優とか)。

当時いろいろな実験をして、透視とかテレパシーは少なくとも自分に関してはないらしいと分かった。それで次第に足が遠のいてしまったけれども、もし自分でなくてもあの部屋にいた誰かがそういう能力を持っていたら、深入りしてしまう可能性は少なくなかったように思う。それはおそらく、紙一重の差にすぎない。

この本の導入部分は自己啓発セミナーで、それはもともとアメリカのニューエイジ運動の中から出てきた手法である。少人数を閉鎖された環境に一定期間置いてプレッシャーをかけることで、参加者の感情をある程度操作することができる。

もちろんそれには個人差があって、何も感じない人間は何も感じないから足が遠のく(私のように)。でも、どこかに弱点があったり偏りがある人間にはすばらしい体験に思えて、繰り返しセミナーを受けて徐々に深みにはまり、けた違いのおカネをはたくのである。

その後の大脳生理学の知見により、脳のある部分を刺激することで幻覚を見ることが明らかとなったし、ある種の薬物を使用することで感情も制御可能である(例えば抗うつ剤)。透視や超能力をトリックでそれらしく見せることができるのは、仲間由紀恵がさんざんやっていた。

薬物やトリックを使わなくても、言葉によって人間の感情を動かすことはできる。警察が尋問の時に使うとされる「怒鳴り役」「なだめ役」などもその一つだし(実際に尋問されたことはないので想像だが)、この本を読むと自己啓発セミナーはまさにそう。演劇をやっているのと同じことだが、それで騙されるのが人間である。車谷長吉が「耳から入るのはみんな毒」と書いていたとおりである。

そうした手法を使って信者を増やしてきたのがオウム真理教だし、他の宗教だって似たようなところはある(TRICKのモデルとされる宗教団体など)。自己啓発セミナーやマルチ商法も同じ穴のムジナである。

だから、そうした胡散臭い連中がサークルにいて、それらしく超能力を見せてくれたりしたら、そういう世界に深入りしたかもしれない。それでなくても、1999年には世界は滅びるかもしれないと思った人は少なくなかったのである。

この本では、「どこかに弱点があったり偏りがある人間」が怪しげなセミナーにはまっていく様子が描かれる。人間は、そこにある事実を見るのではなく、見たいものを見るのだということがよく分かる。

そして、この本の主張の一つは、「所詮彼らがやっているのはカネ儲け」ということである。いくら口できれいごとを並べてみたところで、実のところそれしか考えていない。だから、自己啓発セミナーやマルチ商法をやっていた人間は、おそらくオレオレ詐欺もやっているんだろうと思う。

私自身、宗教が心のやすらぎとなると思っているし(お遍路歩きをしているように)、現在の科学では説明できない現象があるとも思っている(例えば、第六感とか虫の知らせ)。しかし、そうした人達の興味は何が真実なのかではなく、どうやって自分がいい思いをするかなのだ。

数億年先に地球が太陽に飲み込まれることは予言できても、たかだか十年先に何が起こるか分からないのが人間である。おそらく人の世が続く限り、手を変え品を変えて同じようなことに深入りしたり財産をはたいたりする人はいるのだろう。自分は大丈夫と思っていても、紙一重で逃れているに過ぎないことは自覚しておくべきかもしれない。

p.s. 1970~80年代少女コミックス等、書評いろいろあります。バックナンバーはこちら


この本を読んで、大学のサークル「心理学研究会」で超能力について勉強していたことを思い出した。どちらに転ぶかは紙一重だったような気がする。

プロフィール

taipa

Author:taipa
3年前にリタイア、気ままなリタイア生活を送っています。
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