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朝4時スタートで自己最高標高に挑む 北岳(その3)

さて、私がこれまで到達した最高地点は立山・一ノ越の2705m、泊まった最高地点は尾瀬沼ヒュッテの1670mである。北岳の頂上に到達すれば初めての3000m越えだし、白根御池小屋の2236mという高さで泊まったのも初めてである。

標高0mと比較すると2200mで酸素濃度が80%弱、3000mでは70%まで低下するといわれる。人により、あるいは体調によっては高山病の症状が出る危険がある。だからヒマラヤへの遠征では高地順応として薄い空気に体を慣れさせる必要があるが、日本で2番目の山に登るのだからそのくらいは注意しなければならない。

ということで、いくつか準備した対策があった。一つは、前に書いたように、意識してスローペースで歩くことである。後ろから来た人にはどんどん先に行ってもらい、コースタイムは気にしない。白根御池小屋から北岳まで4時間のコースタイムだが、仮に6時間かかっても大丈夫なように4時に出発したのである。

もう一つは、大きなリュックを小屋にデポして、サブザックで往復することである。持ったのはヘルメット、チェーンアイゼンと、ヘッデンやツェルトなどの緊急用品、あと水と行動食である。

出発時には5kg近くあったかもしれないが、歩いている間に飲む水の分が減って4kgほどになっているはずである。小屋を出る時、私同様早出のおじさんに「荷物小さくていいなあ。僕もそうすればよかった」と感心された。

草すべりの雪渓急斜面をチェーンアイゼンで登って行くと、ガレ場の登山道が地上に現れる。白根御池を見下ろすと、スキーのジャンプ台のようだ。後続グループの何人かが雪渓の下部に見える。

当初計画では、5時半に宿を出発して、9時に肩の小屋、10時に北岳頂上と考えていた。実際には4時にスタートしたので、1時間半余計にかかっても大丈夫である。小屋の朝食を食べたグループが出発するのは早くて5時半だろうから、計画同様1時間半のアドバンテージがある。できれば、北岳まで追いつかれずに歩ければ最高である。

それでも、意識してゆっくり登るというのは高地では忘れてはいけない。スイッチバックの急傾斜が続く中で、さきほど雪渓取り付きにいたグループに抜かれたけれども、まだ時刻は5時すぎたばかり。朝食後スタートの組はまだ宿を出ていないはずだ。

気がつくと、谷を挟んだ反対側、鳳凰三山の方向から、太陽が登ってきた。朝日に照らされて、北岳から池山吊尾根にかけての残雪が光っている。2日限りの好天、まさに束の間の太陽である。

ここ草すべりの斜面は休めるところが少なく、時折現れる緩斜面で平らな石を見つけて座るくらいである。登り始めて約2時間、小広くなったスペースに資材や道具箱が置かれている場所が現われた。「植生保護柵」の説明看板があり、シカの食害から保護するため柵を設けたと書いてある。そろそろ標高2800m、こんな高いところにもシカがいるんだ。

その柵のすぐ上が、沢ルートへの分岐であった。ここで抜かれた単独行の女性から「富士山はどちらでしょうか」と聞かれた。「もう少し高い場所なら見えるんじゃないでしょうか」と返事したのだが、実際に、ここと小太郎尾根分岐の間で、池山吊尾根の向こうから富士山が現われたのだった。

下山時の話になるが、このあたりでカメラや録音機材、無線を持った10人ほどのグループがロケをしていた。前日に白根御池小屋に泊まったおばさんの話では、ロケをしているのは工藤夕貴らしい。「ほら、井沢八郎の娘の」と話していたのだが、若い連中は井沢八郎なんて知らないだろうと傍から聞いていて思ったのだった。

私の若い頃、カラオケで「ああ上野駅」を唄うオヤジはまだ何人かいたものである。それにしても、ここまで登って来るのに広河原から5時間はかかる。いくら自然派とはいえ、なかなか大変である。しかも好天はこの2日だけで、次の撮影は1週間2週間先になる。そうするとまた、5時間登って下りてを繰り返さないといけない。

植生保護柵分岐からは比較的傾斜が緩やかになり、やがて上の方に雪をかぶった稜線が見えてきた。小太郎尾根分岐である。先が見えてきたのでうれしくなる。そして、スイッチバックを登って雪の稜線に出た。向こう側からは、これまで見えなかった南アルプスの峰々が姿を現わす。

雪を被っていたのは小太郎尾根分岐に至る北側の斜面で、アイゼンなしで50mほど登るとすぐ雪のない登山道に出た。6時40分、小太郎尾根分岐に到着。すでに標高は2872m、過去最高地点を更新した。今回もっともハードと想定していた草すべりからの急斜面を登り切ったが、まだ余裕があるし、時間も十分にある。あとは頂上まで行くだけである。

(この項続く)

p.s. 「中高年の山歩き」バックナンバーはこちら


草すべりの最上部からさらに急傾斜が続く。鹿害防止の保護柵の先が沢を登るコースとの分岐で、このあたりから比較的楽になる。


小太郎尾根分岐が近づくと池山吊尾根の向こうから富士山が顔を出す。下山時にこのあたりでロケをしていた。同宿のおばさん情報によると工藤夕貴らしい。


ようやく稜線の下まで来た。雪を被っている上が小太郎尾根分岐。

プロフィール

taipa

Author:taipa
3年前にリタイア、気ままなリタイア生活を送っています。
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