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佐藤天vs豊島、第77期名人戦は千日手が勝負を決めたか ~将棋の話題

第77期名人戦七番勝負(2019/4/10~5/17)
挑戦者 豊島将之 4-0 前名人 佐藤天彦

このところ、将棋実況を見て過ごすことが多くなったので、気がついたことを書いてみたい。まず、先週行われた七番勝負第4局で豊島挑戦者が勝ち、4連勝で初の名人位獲得となったシリーズについて。

いまでこそ(契約金の関係で)竜王が最高位ということになっているけれども、江戸時代からの伝統があり、タイトルとしても第二次世界大戦前からある名人位は別格である。その名人位を豊島王位・棋聖がストレート勝ちで奪取、これで1年間に一気に三冠となった。

ただ、今回の七番勝負が名勝負だったかというと、ちょっと首をひねるところがある。4-0のストレートだったからというのではなく、第1局に先手番の佐藤名人が、1日目の午後早い時間にもかかわらず千日手にしたのが個人的にまず気に入らない。

実力が接近している場合先手がやや有利といわれていて、それは先手の方が主導権を奪えるからである。1手先に指せる分、どういう駒組みを選ぶか比較的自由に決められるが、後手は先手の陣形をみて不利にならないようにする必要がある。

だから、五番勝負・七番勝負といった番勝負の場合、テニスと同じで後手番でいかに勝つか、相手のサービスをブレークするかが勝負の分かれ目となることが多い。その第一局で、佐藤名人は先手番を千日手にして、実質的に4局中3局を後手番で指すことになったのである。

「先手後手関係ないよ。俺は強いんだから勝つ」というのであれば、少なくともストレート負けしてはいけない。それに、名人たるもの、相手の攻勢をがっちり受け止めるのがあるべき姿だと思うのである。

将棋は相手の王将を詰めれば勝ちだが、引分け的な決着が2つある。千日手と持将棋である。持将棋は両方の王様が相手陣に入玉して双方詰みがなくなるケースなのでまさに引分けだが、千日手は同一手順の繰り返しで勝負が進まなくなることである。引分けというよりノーコンテストに近いかもしれない。

そして、千日手となった場合、先手後手を交換して指し直しである。だから、後手番となった場合、あえて千日手を避けないという作戦もありうる。有利とされる先手番で指し直しできるからである。逆に、先手番の場合はそういう局面にならないよう注意しなければならない。

その先手番で、しかも2日制の1日目で千日手というのがよく分からない。まさに序盤もいいところで、まだ事前研究の及ぶ範囲内である。中盤以降の千日手はお互い避けようがないこともあるが、まだ序盤である。この日の戦型である角換わりは序盤で差がついてしまうケースも多いので序盤だからダメというのではないが、だからこそみんな研究しているのである。

結局、差し直し第1局、第2局と先手番の豊島が勝って、迎えた第3局。この先手番で何とかしないとストレート負けの危険性がかなり大きくなるという大事な一局で、佐藤名人は終盤まさかの見落としで逆転負けを食らうのである。

この第3局、後手番の豊島が序盤やや優勢に進めていたものの、中盤以降形勢不明となり、終盤では名人かなり有利な情勢となっていた。ソフトの評価値で1000を超えていたから、「間違えなければ勝ち」という状況である。

ところが、何回か決め手を逃して+500くらいまで差が詰まり、最後は相手が攻めてきているのを受けずに攻撃に出て、そのとたん評価値は-9999になった。「勝負ありました」ということである。

というのは、その手順で名人が攻め続けた場合、王手の千日手となってしまうのである。王手の千日手にはルールがあって、王手をかけた側が手を変えなくてはならない。しかし王手をかけないと、次の手で自分の王様が詰まされてしまうのであった。

ということで第3局も豊島が制し、迎えた第4局。今度は豊島の先手番で千日手になりそうになった。ここで豊島は1筋に角を打って打開、千日手を避けたのである。

飛車は盤面どこに打っても可動域は16マスあるが(もちろん、相手の駒があるのでそのすべてに動ける訳ではない)、角の場合は打つ場所によって可動域は異なる。盤面中央に打てば16マスで飛車と変わらないが、端に近づくほど可動範囲が狭まり、1筋・9筋など端に打てば8マスにしか動けない。端に角を打つのはそれだけ駒の働きがよくないのである。

だから必ずしも成算があったとは思わないのだけれど、最後は終盤のねじり合いになり豊島が4連勝で名人位を獲得した。先手番で千日手にした佐藤としなかった豊島の差が出たといえば言い過ぎだろうか。

佐藤天彦前名人は若い時からタイトル獲得間違いなしと言われた逸材で、実際に3年前、当時の羽生名人からタイトルを獲った。ただ、名人以外のタイトル戦にはあまり縁がなく、タイトル獲得どころか挑戦者まで残ることもほとんどない。予選落ちしてしまうこともしばしばである。

4期連続で名人というケース自体、1980年代の中原名人以来ないので防衛できなかったことを悲観する必要はない(その後永世名人権利を得た谷川、森内、羽生は通算獲得年数によるもので、連続防衛ではない)。けれども、今回の負け方(千日手とポカ)や他のタイトル戦の不調を勘案すると、復調には時間がかかるかもしれない。

コンピュータと対局したり派手な和服を着たり、古い時代の将棋指しのイメージ(気難しくてギャンブル好き)を大きく変えた棋士であり、ぜひがんばってタイトル戦線に再浮上してほしいものである。

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第1局千日手の場面。ここから5二飛、6一馬、8二飛、7一馬の手順が続いて千日手となった。(王と玉が逆ですがご勘弁ください)

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