FC2ブログ

記事一覧

握手大師を見て国分寺の盛衰に思いをはせる 五十九番国分寺(その2)

金光山国分寺(こんこうさん・こくぶんじ)。聖武天皇によって各国に置かれた国分寺の一つである。伊予の国府と国分寺はここに置かれたので、古代は松山ではなく今治が政治経済の中心であったことが分かる。しかし、藤原純友の乱に始まり戦国時代までの度重なる戦乱により荒廃し、「今は茅葺きの小さな堂となっている。衰えぶりに心が痛む」と霊場記に書かれている。

今治の札所はお寺のある山をそのまま山号としているところが多いが、ここ国分寺は周囲が平地である。江戸時代にはすでに金光山という山号であったと霊場記にあるので、もちろん金光教より古い。ご本尊である薬師如来の瑠璃光浄土から名付けたものだろうか。

石段を数段登って本堂エリアに達する。それほど大きな境内ではないのは、かつて荒廃していたものを近年になって再興したからと思われる。本堂と大師堂が棟続きになっており、建物自体それほど古いものではない。天平時代の国分寺は現在より150mほど東にあり、高さ70mの七重塔があったとされる。現存していればもちろん国宝級である。

考えてみれば、札所は寺であるから塔があって不思議ではないのに(塔はもともとお釈迦様のお骨を納めたもので、本来の寺は金堂・塔・回廊がセットである)、これまで回った中では五台山とか石手寺くらいで、他は多宝塔か石積みの十三重塔があるくらいで、意外と少ない。真言密教ではあまり重視されないのかもしれない。

そして、国分寺の創立は弘法大師が生まれるよりずっと昔なのだが、境内入ってすぐの場所に弘法大師の石像がある。「握手弘法大師」と書いてある。握手してくださいという意味なのか、右手を差出し握手の形をしている。もちろん、現代に作られたものであろう。海外からの参拝客を意識しているのだろうか。

このあたりの地名は国分というので、かつて周辺一帯は国分寺の敷地だったのだろう。少なくとも、国分寺を中心に開かれた土地であったことは間違いない。そして、このあたりの律令時代の郡名は越智郡である。越智氏・河野氏の越智である。この周辺から越智氏が勢力を広げ、伊予が開かれたのはここからである可能性は高いのである。

奈良時代に国家仏教が隆盛し、全国統一したばかりの大和朝廷の後ろ盾のもと、全国に国分寺が開かれた。しかし、律令国家から藤原摂関政治に移る過程で国家財政は破綻し、国分寺の多くは衰退した。越智氏の勢力も同時に衰え、それが上向くのは源氏の世になってからである。

八十八ヶ所の原型が整ったのは鎌倉末から室町期と考えられるが、それからすぐに戦国時代となり、札所の多くは兵火に焼かれることとなった。それらが復興したのは江戸時代になってからであり、札所のいくつかは日本中にある本山・末寺よりもさらに新しく整備されたものである。

そう考えると、伊予国分寺がかつて広大な寺領を有し栄えた山であったことを示すのは、現代まで残っている地名だけといえなくもない。少なくとも握手大師は、その発想を非難するものではないが、霊場にふさわしいものとはいいにくい。

現在はたいへんコンパクトになった国分寺の境内で、リュックを下ろしベンチに腰かけて、ゆっくりしながら今後の方針を再検討する。帰りのエアの時間を考えると、14時30分壬生川(にゅうがわ)発の特急で松山に向かうことが望ましい。計画では、番外霊場の世田薬師、臼井御来迎、日切大師といった旧跡を経由して壬生川に向かうことを考えていたが、残り時間はあと4時間しかない。

遍路地図にはJR壬生川駅までの経路が載っていないのだが、壬生川には出張で何度か来ていて、土地勘はある。直行すれば大体12km、寄り道して2~3kmプラスといったあたりかと思われた。お昼を食べる時間も考えると、あまり余裕がない。

幸い、この日も風がなく穏やかな日で、前日までと違い雲が広がっているのでそれほど暑くはない。寄り道するかどうかは後から考えるとして、ひとまず壬生川近くまで行こうと腰を上げる。なぜか足が進まないのは下りから平地になったからだと思っていたが、後から考えると「朝粥」の影響でHPが不足していたのであった。

(この項続く)

p.s. 「四国札所歩き遍路」のバックナンバーはこちら


国分寺の本堂(左)と大師堂(右)は棟続きになっている。


現在の国分寺は高台にあり、このあたりの地名・国分からすると周囲一帯はすべて国分寺の境内であったと思われる。後姿の握手大師と私の荷物。

プロフィール

taipa

Author:taipa
3年前にリタイア、気ままなリタイア生活を送っています。
過去のnifty(2005-2014)、忍者(2014-2018)、当サイトの15ヶ月を経過したブログ記事は、下のリンクからホームページでご覧いただけます。

カレンダー

01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29