第36期竜王戦、伊藤匠が5組から勝ち上がり挑戦
- 2023/08/15
- 08:45
第36期竜王戦挑戦者決定戦(2023/7/31-8/14)
伊藤匠六段 2-0 永瀬拓矢王座
決勝トーナメント展望記事で「豊島九段本命、永瀬王座対抗、単穴稲葉八段というところだが、伊藤匠・出口戦の勝者が台風の目」と書いた。永瀬王座は予想どおりだったが、伊藤匠六段が5連勝で挑戦者決定戦に進んだのには少しびっくりした。
1組勢の広瀬八段、丸山九段、稲葉八段に、危ない場面はあったものの序盤から五分以上にわたりあった。5組・6組優勝者が挑戦者決定三番勝負に進むのは竜王戦の歴史ではじめてである。
そして、挑戦者決定三番勝負で永瀬王座に連勝して挑戦権獲得。これまでランキング戦からの挑戦は4組の渡辺明五段がもっとも下位だったが、伊藤匠はこれを更新し、あわせて七段に昇段した。
藤井竜王、伊藤七段ともに2002年生まれで、第1局時点で21歳対20歳は、過去最年少のタイトル戦対戦となる。
伊藤六段のトーナメント勝ち上がりはたまたまではなく、研究の深い裏付けを感じさせた。広瀬八段戦は序盤からほとんど隙がなく、丸山九段戦は角換わりから勝ち切った。
稲葉八段戦、永瀬王座戦は苦しい場面もあったが、いずれも序盤から趣向をみせて自分の研究範囲に持ち込もうという意欲がみられた。
藤井七冠と比較すると、序盤は藤井七冠がオーソドックスな印象があるのに対し、伊藤六段は早くから動くことが多い。動いた結果すぐに優勢にはならないのだが、どこかで逆転可能な局面に誘導する。
藤井七冠相手に一度優勢を許すと、持ち時間が切迫しない限り逆転するのは困難である。特にタイトル戦の番勝負は竜王戦はじめストップウォッチが多いので、藤井七冠はここ数年、意識的に持ち時間に余裕を作ることが多い。
そうした点を勘案すると、現時点では藤井竜王有利と予想するのが妥当だが、藤井竜王にとって同年配以下の挑戦者を迎えるのは初めてである。両者とも感覚も若いし、AIを利用した研究にも長けている。
そして、伊藤六段にとって、タイトルを獲得するには藤井七冠の壁を破らないことにはどうにもならない。当然、対藤井対策も練って来るだろうし、どこかで勝たなければならないと考えるだろう。
その意味で、勝敗はもちろんだが、伊藤新七段がどういう作戦で対抗するかに注目したい。
p.s. 将棋関連記事のバックナンバーはこちら。

第36期竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局。第1局を先勝した伊藤六段、右辺で竜とと金を作られてやや苦しいかと思われたが、△6七銀から先手陣に殺到。この後二転三転したが連勝して挑戦権を獲得した。
伊藤匠六段 2-0 永瀬拓矢王座
決勝トーナメント展望記事で「豊島九段本命、永瀬王座対抗、単穴稲葉八段というところだが、伊藤匠・出口戦の勝者が台風の目」と書いた。永瀬王座は予想どおりだったが、伊藤匠六段が5連勝で挑戦者決定戦に進んだのには少しびっくりした。
1組勢の広瀬八段、丸山九段、稲葉八段に、危ない場面はあったものの序盤から五分以上にわたりあった。5組・6組優勝者が挑戦者決定三番勝負に進むのは竜王戦の歴史ではじめてである。
そして、挑戦者決定三番勝負で永瀬王座に連勝して挑戦権獲得。これまでランキング戦からの挑戦は4組の渡辺明五段がもっとも下位だったが、伊藤匠はこれを更新し、あわせて七段に昇段した。
藤井竜王、伊藤七段ともに2002年生まれで、第1局時点で21歳対20歳は、過去最年少のタイトル戦対戦となる。
伊藤六段のトーナメント勝ち上がりはたまたまではなく、研究の深い裏付けを感じさせた。広瀬八段戦は序盤からほとんど隙がなく、丸山九段戦は角換わりから勝ち切った。
稲葉八段戦、永瀬王座戦は苦しい場面もあったが、いずれも序盤から趣向をみせて自分の研究範囲に持ち込もうという意欲がみられた。
藤井七冠と比較すると、序盤は藤井七冠がオーソドックスな印象があるのに対し、伊藤六段は早くから動くことが多い。動いた結果すぐに優勢にはならないのだが、どこかで逆転可能な局面に誘導する。
藤井七冠相手に一度優勢を許すと、持ち時間が切迫しない限り逆転するのは困難である。特にタイトル戦の番勝負は竜王戦はじめストップウォッチが多いので、藤井七冠はここ数年、意識的に持ち時間に余裕を作ることが多い。
そうした点を勘案すると、現時点では藤井竜王有利と予想するのが妥当だが、藤井竜王にとって同年配以下の挑戦者を迎えるのは初めてである。両者とも感覚も若いし、AIを利用した研究にも長けている。
そして、伊藤六段にとって、タイトルを獲得するには藤井七冠の壁を破らないことにはどうにもならない。当然、対藤井対策も練って来るだろうし、どこかで勝たなければならないと考えるだろう。
その意味で、勝敗はもちろんだが、伊藤新七段がどういう作戦で対抗するかに注目したい。
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第36期竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局。第1局を先勝した伊藤六段、右辺で竜とと金を作られてやや苦しいかと思われたが、△6七銀から先手陣に殺到。この後二転三転したが連勝して挑戦権を獲得した。