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ビル・パーキンス「DIE WITH ZERO」

たまに、世の中が自分に追いついてきたと感じることがある。この本は図書館で予約待ちをするくらい注目されているのだが、読んでみると私が以前から思っていたことがほとんどであった。

「DIE WITH ZERO」とは、死んだ後におカネを残したって意味がない。子供に残すにせよ福祉事業に使うにせよ、必要なものなら生きているうちに贈与すべきである。タイミングを逸しては意味がないということである。文字通り「ゼロで死ね」が分かりやすい。

われわれは「アリとキリギリス」の童話を聞いて育ってきたから働いて働いて冬に備えるのが当然と思っているが、アリは働き過ぎだしキリギリスは貯金しなさすぎ。最適のバランスがあるのではないかと著者は言う。

おカネで代えられる時間はあるけれど、代えられない時間もある。若いときは2度とないし、心身が健康なのも限られた期間だ。後からでは経験できないタイミングは必ずある。幸運と同じで、後ろに髪の毛はない。

多くの人はこのことを分かっていない。アメリカでは(日本でも)年齢ごとの財産額をみると、年取れば年取るほど多い。いったい何を待っているのだろうと著者はいう。老年期になる前に、財産は取り崩して2度とできない体験をすべきだ。

とはいえ、われわれ貧乏人は、言われなくても財産を使い果たしてから死ぬことになる。大多数の人はそうかと思っていたら、そうでもないらしい。だから一人暮らしの老人がルフィーに狙われたりするのだ。

著者はいう。何百万ドル残したこと自体を得意がることに全く意味はない。それは、使わないおカネを稼ぐために無駄な時間を費やしたことに他ならないからだ。万一のために備える金融商品はあるし、やみくもに不安がっているのは知恵が足りない。それよりも、その時しかできない体験をするために時間とカネを使うべきだ。

著者はトレーダーとして大成功して、カリブ海のリゾートホテルを1週間借り切って自分の誕生パーティーをするようなセレブだが、人生のある時期(40~50歳代)をピークにして、資産をゼロに向けて取り崩し中であるという。

カネよりも時間、そして経験の方がずっと大事である。いよいよ動けなくなり、カネがあっても延命治療にしか使えない時がやってくる。それまで、できるだけ多くの経験をしておきたい。楽しみは全米各地のポーカートーナメントに出ることと書いてある。

私はセレブとは遠いところにいるけれども、ポーカートーナメントがどういうもので、どのように楽しいかは実際に体験してよく知っている。著者の言うように、その時しかできないことを体験するのは、おカネには代えられない価値がある。

人生の価値は残した遺産の額で決まるのではない。本人にとっても、数週間かせいぜい数ヶ月の延命措置のために数年分の稼ぎを充てるのは馬鹿げている。人生の豊かさは、有意義な経験をどれだけ積むかで決まる。当り前のことだ。

とはいえ、著者の考えに100%賛同する訳ではない。首をひねる主張もいくつかある。長くなるので、続きはまた明日。

(この項続く)

p.s. 書評過去記事のまとめページはこちら。1970年代少女マンガの記事もあります。

diewithzero.jpg
邦題「人生が豊かになりすぎる究極のルール」なのだが、どうだろうか。そのまま直訳して「ゼロで死ね」の方が著者の考えを示すように思う。

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7年前にリタイア、気ままな年金生活を送っています。

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