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アースダムの犬塚池を越えて仙遊寺へ 五十八番仙遊寺(前編)

八幡宮には午後1時の時報が鳴るまでいた。市街からだろう、サイレンかチャイムのようなものが聞こえた。今治市街・瀬戸内海を望む大変いい景色で、また風もなく暖かい日だったのでゆっくり過ごすことができた。

仙遊寺の宿坊には、午後3時到着と伝えてある。遍路地図には五十三番・五十四番間の所要時間は40分と書かれているが、山門を過ぎてから本堂まで20分かかるという情報もある。標高255mと2.4kmから考えて、標高差で40分、距離で40分の約1時間半はみる必要があるように思われた。

帰りは栄福寺には寄らず、集落を通る道路と交わる地点まで下る。交差点に、遍路地図には載っていないが小さな売店・食堂がある。「手作りソフトクリーム」と書いてあるので、「ソフトクリームはありますか」と入って聞いてみると、「4月からなのよね。今日は暑いからみんなに言われるんだけど」と、残念なお答えであった。

すぐ後からお昼を食べに家族連れが入ってきたので失礼したが、結果的にみると最後の補給基地であった。店の前には自販機もあり、少ないながら土産物も置かれていた。もっとゆっくり見れば、何か非常食にできるものを見つけられたかもしれない。

このあたり、前日のホテルで夕食をカップラーメンといよかん1つで済ませた経験が物を言っていて、いよいよこのままでも1泊2食付いていればなんとかなると思っていた。

泰山寺から登ってきた道をそのまま奥に進む。左手に高くなっていた八幡宮の稜線が低くなってきて、その低くなった稜線に向かって道が登って行く。ほどなく、アースダムの地形が見えてきた。

瀬戸内はアースダムの本場であり、愛媛県に入ってよく見かけるようになった。あの、龍光寺・仏木寺間の中山池もそうである。

降水量は平均して少ないものの、ひとたび大雨が降ると川幅では収まらないくらいになるので、治水面からも農業用水確保の面からも、古代からアースダムが建設されてきた。行基や空海も、札所の由来で語られるだけでなく、実際に各地の治水工事に携わったと史書に書かれている。

空海が満濃池建設に従事したのは記録で確認できる史実であるから、宗教家であっただけでなく土木建築等の知識も持っていたのだろう。もっとも、当時の先進国である唐に派遣されるというのはそういうことで、薬学とか地理・歴史など各分野に広く知識があったと考えられるのである。

アースダムとは、簡単にいうと川を堰堤でせき止めてため池を作るものである。まったく水の出口がないと巨大な水圧がかかって決壊してしまうし、必要な場合に水を供給するのが目的だから、水量が調節できるよう水の出口が設けてある。放っておくと土砂で池が浅くなってしまうので、定期的に放水するのが「池の水全部抜く」で有名になった掻い掘りである。

「池の水」では掻い掘りして有害外来生物を駆除しているが、中世の掻い掘りで得られた魚介類は農民にとって貴重な蛋白源であった。いまや、こうしたため池に棲んでいる魚など臭くて捨てるしかないので、現在では掻い掘りはほとんど行われない。

栄福寺の上にあるアースダムを犬塚池という。昔、栄福寺と仙遊寺の鐘に合わせて行ったり来たりする犬がいて、ある日両方の鐘がいっぺんに鳴ったものだから、どうしていいか分からず中間の池で溺れ死んでしまったという伝説がある。伝説のとおり、池の先にそびえているのが佐礼山で、この池は宿坊の窓から見ることができる。

道なりにダムの端まで行く道と、堰堤を登る道が分かれていて、登り口のところに「名勝 八幡山 犬塚池 佐礼山」と石碑が建っている。ここを登ると、ダムに沿った堰堤上の細道になる。かなり大きな池で、これだけあればずいぶん広い水田に水を流すことができるだろう。

ダムの端まで進むと集落から通じてきたさきほどの道と合流し、山の中に入って行く。遍路シールがないので心細いが、丁石がときどき現われ、ここが古い遍路道であることを示している。しばらく歩いて車道に出て、ここから上は車道歩きとなる。

「ここは私道であり、道路保全のため協力金をいただきます。納経所にお支払いください」と料金表が書かているが、幸い歩行者は無料のようである。バス遍路からはいくらでも取ればいいと思うが、お寺にとってみればバスや車の参拝客が大多数であり、貴重な収益源でもあるだろうからそうそう無理な価格設定もできないだろう。

(この項続く)

p.s. 「四国札所歩き遍路」のバックナンバーはこちら。モバイルフレンドリー対応済。



栄福寺から山道を登ると、アースダムの犬塚池に達する。後方が佐礼山で、宿坊の窓からこの池が見える。


山道には遍路シールは少なく、昔ながらの丁石が目印となる。


再び車道となり、栄福寺から1時間少しで仙遊寺仁王門に達する。

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taipa

Author:taipa
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