第81期名人戦、藤井聡太竜王名人・七冠に
- 2023/06/02
- 05:15
第81期名人戦七番勝負(2023/04/05-6/1)
藤井聡太竜王 4-1 渡辺明名人
藤井・渡辺のマッチアップは極端に成績が偏っていて、第5局前まで藤井竜王の19勝4敗である。勝率は実に82.6%。対全棋士が83.3%だから、ほとんど変わらない勝率をあげていることになる。
この成績どおり、これまで両者の番勝負は第91期棋聖戦3-1、第92期棋聖戦3-0、第71期王将戦4-0、第48期棋王戦3-1と、ほとんど一方的に藤井竜王が勝っている。
そして今回の名人戦も、第1、2局を藤井勝ち、第3局こそ渡辺名人が返したが、第4局藤井勝ちで渡辺名人は早々にカド番に追い込まれた。
そして第5局、印象深かったのは下図の局面。封じ手前の一手を定刻5時半の直前に指した渡辺名人だが、藤井竜王あわてず20分の考慮で封じた。封じ手は△9五歩。大方の予想通りの手であった。
再開後ノータイムで渡辺名人▲同歩。これに対し35分で藤井竜王が指したのが、△4七銀の打ち込みだった。この手は封じ手の前にも検討されていたのだが、先手にも対抗手段があって難しいとされていたのである。
9筋の突き捨てが入れば、△4七銀が成立すると読んでいたとすれば、さすが藤井竜王である。おそらく△8六歩や△6六歩といった飛車を活用する手を読んでいた渡辺名人には予想外だったはずで、62分の長考から▲2四歩△同歩▲4五歩と攻勢に出た。
ところが、△3六銀と成った手が意外と強靭で、渡辺名人の猛攻も一歩届かない。細い攻めを続けるのが持ち味の渡辺名人には珍しい退却で、反転攻勢に出た藤井竜王が菊水矢倉の渡辺玉を攻略した。
藤井竜王は豊島以来の竜王名人となるとともに、これで8タイトル中7冠を制覇、残すは王座だけとなった。ということは、王座戦で永瀬王座に上座を譲る時以外は、他の全棋戦で、全棋士に対し上座で対局することになる。すごいことである。
叡王戦第4局から休みなしの移動で名人獲得を果たしたが、本日(6/2)帰郷するとすぐに棋聖戦五番勝負がスタート。第1局(6/5)はベトナムなので、またもや準備期間ほぼゼロで臨まなければならない。ただ、棋聖戦も王位戦も相手は同じ佐々木大地七段である。
一方の渡辺前名人。無冠となるのは、2004年12月の竜王奪取前の六段時代以来じつに18年半ぶりである。規定上は「前名人」を名乗れるはずだが、おそらく羽生と同様「九段」を選ぶのではないか。
羽生世代の棋士たちがまだ一線級で活躍しているのに、このまま老け込んでしまうとは思われない。きわめて相性の悪い藤井竜王名人に対し今後どうやって巻き返していくか注目される。なにしろ、打倒藤井ができなければ、タイトル獲得はほとんどできないのである。
p.s. 将棋記事のバックナンバーはこちら。軽量化工事直後なので、不具合あればご容赦ください。

第81期名人戦は、藤井竜王が4-1で名人獲得、これで七冠達成となった。図は2日目の再開直後。封じ手△9五歩に渡辺名人がノータイムで▲同歩と応じたのに対し、△4七銀と打ち込んだ。
藤井聡太竜王 4-1 渡辺明名人
藤井・渡辺のマッチアップは極端に成績が偏っていて、第5局前まで藤井竜王の19勝4敗である。勝率は実に82.6%。対全棋士が83.3%だから、ほとんど変わらない勝率をあげていることになる。
この成績どおり、これまで両者の番勝負は第91期棋聖戦3-1、第92期棋聖戦3-0、第71期王将戦4-0、第48期棋王戦3-1と、ほとんど一方的に藤井竜王が勝っている。
そして今回の名人戦も、第1、2局を藤井勝ち、第3局こそ渡辺名人が返したが、第4局藤井勝ちで渡辺名人は早々にカド番に追い込まれた。
そして第5局、印象深かったのは下図の局面。封じ手前の一手を定刻5時半の直前に指した渡辺名人だが、藤井竜王あわてず20分の考慮で封じた。封じ手は△9五歩。大方の予想通りの手であった。
再開後ノータイムで渡辺名人▲同歩。これに対し35分で藤井竜王が指したのが、△4七銀の打ち込みだった。この手は封じ手の前にも検討されていたのだが、先手にも対抗手段があって難しいとされていたのである。
9筋の突き捨てが入れば、△4七銀が成立すると読んでいたとすれば、さすが藤井竜王である。おそらく△8六歩や△6六歩といった飛車を活用する手を読んでいた渡辺名人には予想外だったはずで、62分の長考から▲2四歩△同歩▲4五歩と攻勢に出た。
ところが、△3六銀と成った手が意外と強靭で、渡辺名人の猛攻も一歩届かない。細い攻めを続けるのが持ち味の渡辺名人には珍しい退却で、反転攻勢に出た藤井竜王が菊水矢倉の渡辺玉を攻略した。
藤井竜王は豊島以来の竜王名人となるとともに、これで8タイトル中7冠を制覇、残すは王座だけとなった。ということは、王座戦で永瀬王座に上座を譲る時以外は、他の全棋戦で、全棋士に対し上座で対局することになる。すごいことである。
叡王戦第4局から休みなしの移動で名人獲得を果たしたが、本日(6/2)帰郷するとすぐに棋聖戦五番勝負がスタート。第1局(6/5)はベトナムなので、またもや準備期間ほぼゼロで臨まなければならない。ただ、棋聖戦も王位戦も相手は同じ佐々木大地七段である。
一方の渡辺前名人。無冠となるのは、2004年12月の竜王奪取前の六段時代以来じつに18年半ぶりである。規定上は「前名人」を名乗れるはずだが、おそらく羽生と同様「九段」を選ぶのではないか。
羽生世代の棋士たちがまだ一線級で活躍しているのに、このまま老け込んでしまうとは思われない。きわめて相性の悪い藤井竜王名人に対し今後どうやって巻き返していくか注目される。なにしろ、打倒藤井ができなければ、タイトル獲得はほとんどできないのである。
p.s. 将棋記事のバックナンバーはこちら。軽量化工事直後なので、不具合あればご容赦ください。

第81期名人戦は、藤井竜王が4-1で名人獲得、これで七冠達成となった。図は2日目の再開直後。封じ手△9五歩に渡辺名人がノータイムで▲同歩と応じたのに対し、△4七銀と打ち込んだ。