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福田千鶴「女と男の大奥」

2021年に吉川弘文館から刊行された本。吉川弘文館というと、日本書紀絶対みたいな古いイメージがあるけれど、前に採り上げた「古代の皇位継承」もそうだがこれまでの形式ばった視点から脱却しようという意欲がうかがえる。

まえがきに「俗説的な視点で語られることの多い大奥像を大きく改めることを目指す」とあり、たいへんな意気込みでスタートするが、実際読み始めると、なるほど目から鱗が落ちる内容であった。

俗説的という意味ではTVドラマの大奥像もそうだし私のイメージもそうだったのだが、将軍専用のハーレムというか、大規模な風俗店のようなことを想像するのだが(ドラマでは大奥も吉原もあまり違わない)、実際はまったく違う。

考えてみれば当り前で、大奥というのは将軍の私邸なのだから、生活の場としての要素が第一である。そして、将軍の身の回りのことをする使用人だけで数百人、バックヤードを含めれば千は下らない人数を擁する大組織なのである。

現代に例えれば、給食センターと託児所と幼稚園・小学校、病院、薬局、クリーニング、不動産管理(一種の貸しビル業である)、スーパー銭湯、理容美容、運送会社、ユニクロやホームセンターの出張店舗、さらに介護施設の要素もある。その上に専用キャバクラなのである。

当時は水道も電気・ガスもないから、そういった手配も含まれる。冷房はないけれど冬は暖房が必要だし、畳や障子は消耗品である。そのうえ着るものは和服しかない。それらの手配すべてが大奥の仕事なのである。

だから、キャバクラの指名ナンバー1が大奥を仕切るなんてことはできない。そうした雑事全般に通じていて、かつ幕府の男役人に対して一歩も引かず折衝できなければ大奥を切り回せないのである。春日局みたいな、いけ好かない中年女でないと無理なのである。

実際、将軍の正妻(御台所)やお世継ぎの母親はそれなりに席次が上になるが、大名家からの付け届けの上位に名前が来るのは実際に大奥を仕切っている女ボス(老中ならぬ老女という)である。京都から下ってきたお公家の姫様では荷が重いのである。

長くなったので続きは明日。

(この項続く)

p.s. 書評過去記事のまとめページはこちら。1970年代少女マンガの記事もあります。

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吉川弘文館の最近の本はなかなかおもしろい。大奥は将軍専用キャバクラ(だけ)ではなく、託児所であり病院であり給食センターでダスキンでタクシー会社なのは考えればすぐ分かることだが、気が付かなかった。

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Author:taipa
 

7年前にリタイア、気ままな年金生活を送っています。

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