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防衛費増大、対GDP比より重要なこと(続き)

さて、わが国の財政状況は「異次元金融緩和」によって急激に悪化している。国債の残高は1,000兆円を超え、わずか10年で約500兆円増加している。

約500兆円といえば、GDPの規模である。GDPの2%ではなく、100%である。もちろん、コロナで緊急対策した費用もあるけれど、大部分は金融緩和、低金利維持のための国債増発である。

最近わが国では、国債残高などいくら増えても財政は破綻しないという学説が出ているけれども、それは国債を引き受けてくれる先があるからであって、誰も引き受けなければ金利を上げざるを得ない。

そうでなくても、国債の信用度が下がって国債価格が下がれば、金利が上がるのと同じことである。どこまで耐えることができるのか、それはやってみなければ分からない。

いま約1,000兆円の国債の半分、約500兆円を持っているのが日本銀行、日銀である。ここ数年で百兆円単位で積み上がっているので、大半は1%未満の利率で、償還期間もしばらく先である。

そして、日銀のバランスシート上の自己資本は約5兆円である。これだって莫大な資産なのだが、それでも国債保有残高と比較するときわめて小さい。国債価格が1%下がっただけで、含み損によって実質的に債務超過になってしまう。

さて、いま長期金利が0.5~1%上がると仮定する。もとの金利が低いので、金利の1%上昇は国債価格の1%下落では済まない。仮に7~8%とした場合、数十兆円規模の含み損を抱えるということである。

日銀の場合は普通の市中銀行とは違うので、何らかの政策的措置がとられて(例えば評価損は計上しないとか)破綻は免れるとしても、残り半分の500兆円を持っている郵貯やメガバンク、地方銀行、その他金融機関・証券会社が無事で済むのかということである。

昨日の話に戻ると、クレディ・スイスの破綻と防衛費増大の話が、ここでつながることになる。

欧米で起こっている市場金利上昇が日本では起こらないとはいえない。というよりも、状況が同じなのだから起こらない方がおかしい。すでに、インフレ率は上がっている。軍事費増も同じである(それでもどの国もNATOに入りたがる)。

防衛費増大とは、武器製造や弾薬類の在庫積み増し、軍人・軍需産業の人件費に国家歳出の多くを支出するということである(近い将来、ウクライナ復興支援も加わるだろう)。

それらの多くは、民需と違って波及効果が少ない。東京ディズニーランドでおカネを使えば商品や人件費でみんな潤うが、武器弾薬を増やしてもどこかの国土を破壊するだけである。

別の言葉で言えば、支出しても税収の増加に結びつかないということである。歳入が増えずに歳出が増えるから、国債残高がさらに増えることになる。

しばらくは近年発行した低金利の国債があるのでいいけれども、金利が上がればそのうち歳出の多くを利払いに充てることになる。私の若い頃のように利率5%ということにでもなれば、国は利息を払う以外に何の仕事もできなくなる。

年金の原資もなければ、公務員に支払う給与もなく、教育も道路も港湾も河川管理も、もちろん少子化対策もデジタル化も何もできない。それでも、戦争があれば軍事費だけが増大するのである。

だから本当は、対GDP比率2%などという悠長な話ではないのである。私の予想が外れて、何も起こらずこのまま時が過ぎる方が私にとってもハッピーである。

p.s. 「なんとなく思うこと」、バックナンバーはこちら

bankofjapan.png
防衛費増大とクレディ・スイスの経営破綻。関係ないニュースに思えるけれど、実は深く関係しているような気がする。予想が外れるといいけれど。

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