棋王戦、挑戦者は藤井竜王 六冠へ
- 2022/12/29
- 05:15
第48期棋王戦挑戦者決定二番勝負(2022/12/19-27)
藤井聡太竜王 OO - XX 佐藤天彦九段
棋王戦のベスト4は、昨年と全員入れ替わった。前年度ベスト4は勝ち星1つ有利なトーナメントなので、例年何人か残るのだが、珍しいことである。
一方の勝者組準決勝は、藤井聡太竜王(五冠)と佐藤天彦九段となった。藤井竜王は棋王戦初のベスト4。ここから先は2敗失格制なので、かなりの確率で挑戦者になるものと思われた。天彦九段は44期以来のベスト4で、藤井竜王戦は2年ぶりである。
もう一つの勝者組準決勝は伊藤匠五段と羽生善治九段の対決。伊藤五段は今年竜王戦6組で優勝、順位戦でも連続昇級が目前である。羽生九段はB1順位戦では厳しい戦いが続いているが、挑戦者争いのさ中にある棋王戦と王将戦は好調である。
ベスト4の戦いは、結果的に藤井・天彦の三番勝負となった。勝者組準決勝は先手番の天彦九段が矢倉から趣向をみせる。中盤で藤井竜王がやや優勢となるが、天彦九段が守って決め手を与えない。そして、終盤で藤井竜王に疑問手が出た。
解説の三浦九段が、「どう指しても天彦さんの勝ちです。藤井さん相手にそういうことがあっていいんでしょうか。でも、2敗失格なので藤井ファンは安心してください。」と迷(?)コメントをしていたのが印象的だった。
この一戦で考えるところがあったのか、伊藤五段、羽生九段に勝って挑戦者決定二番勝負に上がってきた藤井竜王の戦い方が一味違った。第1局は横歩取りからお互い玉の薄い戦いとなり、藤井竜王優勢で終盤に入る。
下図は△5四飛の王手を間駒した▲5五香を△同飛と応じられたところ。玉が上がると危険地帯なので、普通は同馬として玉は4七に逃がすところだが、ここで藤井竜王は同玉とした。
一見危ないように見えるが、こうなると7筋方面に逃げる藤井玉を防ぐことができない。結果、入玉ほぼ確定で天彦九段の投了となった。
第2局も似たような流れで、あえて攻めずに天彦九段の攻勢を余して勝った。ABEMA解説陣も(森内九段だったか)「藤井竜王は勝ちパターンを増やしましたね。これまでなら詰ましにいくところでしたが」とコメントしていた。
これまでの藤井竜王であれば、自玉の守りより攻めで、陥落寸前の天彦玉を詰ましに行ったところである。だが、勝者組準決勝ではそこから痛い逆転負けを喫した。竜王戦で防衛を果たしてから2週間。対天彦戦略を準備する時間は十分あった。
攻め合いで1手勝ちするのもスリリングだが、形勢が有利な時にリスクを冒すことはない。今回の藤井竜王の戦いぶりは、ABEMA解説陣の言う通り勝ちパターンを増やしたもので、さらに難攻不落のレベルが上がったかもしれない。
六冠達成のかかる棋王戦五番勝負は、2月5日に第1局が行われる。
p.s. 将棋関連記事のバックナンバーはこちら。

第48期棋王トーナメント挑戦者決定二番勝負第1局。勝者組準決勝で天彦九段に敗れた藤井竜王、間駒の▲5五香を飛車で取られた手に対し、安全な▲同馬ではなく▲同玉と指した。対天彦戦略なのか、いつもと違う指し方であった。
藤井聡太竜王 OO - XX 佐藤天彦九段
棋王戦のベスト4は、昨年と全員入れ替わった。前年度ベスト4は勝ち星1つ有利なトーナメントなので、例年何人か残るのだが、珍しいことである。
一方の勝者組準決勝は、藤井聡太竜王(五冠)と佐藤天彦九段となった。藤井竜王は棋王戦初のベスト4。ここから先は2敗失格制なので、かなりの確率で挑戦者になるものと思われた。天彦九段は44期以来のベスト4で、藤井竜王戦は2年ぶりである。
もう一つの勝者組準決勝は伊藤匠五段と羽生善治九段の対決。伊藤五段は今年竜王戦6組で優勝、順位戦でも連続昇級が目前である。羽生九段はB1順位戦では厳しい戦いが続いているが、挑戦者争いのさ中にある棋王戦と王将戦は好調である。
ベスト4の戦いは、結果的に藤井・天彦の三番勝負となった。勝者組準決勝は先手番の天彦九段が矢倉から趣向をみせる。中盤で藤井竜王がやや優勢となるが、天彦九段が守って決め手を与えない。そして、終盤で藤井竜王に疑問手が出た。
解説の三浦九段が、「どう指しても天彦さんの勝ちです。藤井さん相手にそういうことがあっていいんでしょうか。でも、2敗失格なので藤井ファンは安心してください。」と迷(?)コメントをしていたのが印象的だった。
この一戦で考えるところがあったのか、伊藤五段、羽生九段に勝って挑戦者決定二番勝負に上がってきた藤井竜王の戦い方が一味違った。第1局は横歩取りからお互い玉の薄い戦いとなり、藤井竜王優勢で終盤に入る。
下図は△5四飛の王手を間駒した▲5五香を△同飛と応じられたところ。玉が上がると危険地帯なので、普通は同馬として玉は4七に逃がすところだが、ここで藤井竜王は同玉とした。
一見危ないように見えるが、こうなると7筋方面に逃げる藤井玉を防ぐことができない。結果、入玉ほぼ確定で天彦九段の投了となった。
第2局も似たような流れで、あえて攻めずに天彦九段の攻勢を余して勝った。ABEMA解説陣も(森内九段だったか)「藤井竜王は勝ちパターンを増やしましたね。これまでなら詰ましにいくところでしたが」とコメントしていた。
これまでの藤井竜王であれば、自玉の守りより攻めで、陥落寸前の天彦玉を詰ましに行ったところである。だが、勝者組準決勝ではそこから痛い逆転負けを喫した。竜王戦で防衛を果たしてから2週間。対天彦戦略を準備する時間は十分あった。
攻め合いで1手勝ちするのもスリリングだが、形勢が有利な時にリスクを冒すことはない。今回の藤井竜王の戦いぶりは、ABEMA解説陣の言う通り勝ちパターンを増やしたもので、さらに難攻不落のレベルが上がったかもしれない。
六冠達成のかかる棋王戦五番勝負は、2月5日に第1局が行われる。
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第48期棋王トーナメント挑戦者決定二番勝負第1局。勝者組準決勝で天彦九段に敗れた藤井竜王、間駒の▲5五香を飛車で取られた手に対し、安全な▲同馬ではなく▲同玉と指した。対天彦戦略なのか、いつもと違う指し方であった。