鈴木忠平「嫌われた監督」(続き)
- 2023/01/18
- 05:15

落合監督もたいへん興味深いキャラクターだが、著者の鈴木氏もまた相当に興味深い人物である。中日担当の記者となるまで、鈴木氏はほとんど使い走りのような存在だったという。すでに記者歴10年に近く、若手というより中堅に近いにもかかわらず、記者席の末席にいたのだという。中日担当とされたのも、デスクが「星野監督を”仙さん”と呼び、落合監督は”オチアイ”と呼ぶ」ような記者だったから、落合監督に取材できるような腹心がい...
鈴木忠平「嫌われた監督」
- 2023/01/17
- 05:15

2020年から21年に週刊文春に連載されたシリーズ。著者はnumber(文芸春秋発行)等に記事を掲載するフリーライターだが、その前は日刊スポーツ(朝日新聞系列)で16年間プロ野球記者をしていた。個人的には、若い頃だけで長いこと野球は見ていない。プロ野球だけでなく、高校野球も大学野球も見ない。私の年代だと2つ上に江川がいて1つ下に原がいて、野球を見ないという人間はあまりいない。だから、落合の現役時代はともかく、監...
遠山美都男「古代の皇位継承」(続き)
- 2022/12/27
- 05:15

さらに、孝謙・称徳天皇(重祚したので諡号が2つある)が独身であったため彼女の死によりいわゆる天武系は断絶するが、もともと聖武天皇(孝謙・称徳天皇の父)は天智系とか天武系とか考えていなかったという指摘は重要である。聖武天皇は「この国の権力も富も私のものである」と言って奈良の大仏を作った絶対君主で、藤原氏出身の光明皇后の尻に敷かれた病弱の天皇というイメージは正確でない。だから、娘に天皇を継がせてその後...
遠山美都男「古代の皇位継承」
- 2022/12/26
- 05:15

私が若い頃、20世紀末の古代史の本はほとんどがつまらなかった。基本的に日本書紀絶対、天皇は古くから神聖にして侵すべからずという論調で、古田武彦などキワモノ扱いであった。あまりにも冷遇されたせいか、最後には本当にキワモノの「東日流外三郡誌」に行きついてしまったのは残念であったが、第二次世界大戦前の皇室絶対、大和朝廷は永遠ですというだけの見方に疑問符を投げかけたのは重要であったと思う。そして、私の世代に...
佐伯智広「皇位継承の中世史」
- 2022/11/23
- 05:15

日本史に関する本も、近年新たな分析が加えられているものがあって面白い。この本も、物足りないところはあるものの、いろいろな観点から分析しているところが興味深く読めた。同じ吉川弘文館から出ている「皇位継承の古代史」という本があるのだが(亀田隆之著)、20世紀に書かれたものだけあって正直読むに堪えない。日本書紀は絶対に正しく、天皇は7世紀から神聖にして侵すべからずという観点なのである。(吉川弘文館の同じよ...